監督 グザヴィエ・ドラン
FILMOGRAPHY
マイ・マザー 2009年 原題:I Killed My Mother / J'ai tuè ma mere
胸騒ぎの恋人 2010年 原題:HEARTBEATS / Les amours imaginaires
私はロランス 2012年 原題:Laurence Anyways
トム・アット・ザ・ファーム 2013年 原題:Tom at the Farm / Tom a la ferme
Mommy/マミー 2014年 原題:Mommy
BIOGRAPHY
1989年3月20日、カナダ・ケヴェック州生まれの25歳。6歳のころより映画、テレビドラマやCMなどに出演する人気子役だったグザヴィエが(実はフランス語版『サウス・パーク』のスタン役の声の吹替はグザヴィエなのだ)、17歳のときに自ら書いた脚本を19歳で監督として完成させたデビュー作『マイ・マザー』(09) が、いきなり第62回カンヌ国際映画祭・監督週間部門に選ばれ、世界の映画シーンに鮮烈なデビューを果たし、長い間若手の天才不在と言われた映画界に衝撃を与えた(ドラン20歳)。同作は「若者の視点賞」(Regards Jeunes Prize)を始めC.I.C.A.E. Award、SACD Prize (Directors' Fortnight)を受賞した。
翌年、脚本・監督・主演した『胸騒ぎの恋人』(10) が第63回カンヌ国際映画祭のある視点部門に正式招待され、再び「若者の視点賞」(Regards Jeunes Prize)を受賞。映画祭ディレクターからは「非常にエキサイティングな新世代の一人」と称され、将来が約束された監督として、早くもカンヌの常連監督へとスターダムを駆け上った(ドラン21歳)。続く『わたしはロランス』(12)は、カンヌのコンペ選出確実と高い下馬評だったにもかかわらず、第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門への招待に留まった。記者会見では「選考委員の基準に見合わなかったのであれば、とても残念です」と正直な心情を吐露し話題になったが、いざ作品が上映されるとその手腕が高い評価を得て、主演女優のスザンヌ・クレマンが「ある視点」部門で最優秀女優賞を受賞するに至った。
これまでの3作は、セルフ・ポートレイトに近い人物描写にこだわってきたドランだったが、4作目となる『トム・アット・ザ・ファーム』(13)は、自身のオリジナル・ストーリーではなく初の舞台演劇のアダプテーションに挑戦。第70回ベネチア国際映画祭のコンペ部門に出品され、国際批評家連盟賞を受賞。 その翌年、監督デビューの地、そして自分を見いだしてくれたカンヌにこだわり続け、走り続けた5年間の集大成とも言える5作目『Mommy/マミー』が、ついに第67回カンヌ国際映画祭のメインコンペティション部門に選出され、初コンペで「審査員特別賞」(Grand Jury Prize)を受賞した。審査員長を務めたジェーン・カンピオン監督の『ピアノ・レッスン』を見て育ったというドランは、コンペ常連で83歳のジャン=リュック・ゴダール監督の『さらば、愛の言葉よ』とのW受賞だったこともあり、「ベテランから若手へとバトンが渡されたかのような記念すべき年」、「カンヌの新しい夜明け」と誰もが目を見張った。世界中の映画人の心を動かした受賞スピーチは、「今年の授賞式の中で最も感動的だった」と評され、大きな話題となった。
今ハリウッドで最もホットな女優ジェシカ・チャスティンを主役に据えた初の英語映画『The Death and Life of John F. Donovan』(原題)の脚本を書き終え、春先からの撮影に向けて準備中のドラン。ハリウッドを舞台にセレブリティの日常、マスメディアの洗脳を暴くサタイア(皮肉)・コメディで、チャスティンは、悪魔のような超悪役として、ゴシップ雑誌の女性編集者を演じる。相手役のセレブリティを演じるのは、キット・ハリントン。競演はスーザン・サランドン、キャシー・ベイツと豪華な顔ぶれだ。撮影はモントリオール、ニューヨーク、マイアミ、イギリス、東欧諸国と、予算も含めいよいよ世界規模の映画製作へと乗り出す。
こうしてデビュー以来、一歩一歩、着実に映画の頂点を目指し超スピードで進化し続けるグザヴィエ・ドラン。2015年はいよいよ映画の聖地、ハリウッドへの挑戦が始まる、ドランのセカンド・ステージ元年となる。